理想の住まい研究所

vol.3 失敗しない間取り術①動線計画の重要性と考え方について

住宅は家族の想いを最大限とり入れたとしても、住みやすく気持ちの良い住まいになるとは限りません。暮らしやすく居心地の良い住まいをつくるには、部屋と部屋、空間と空間のつなぎ方など、動線を関係付けながら考えることが大切です。間取り博士と呼ばれる建築家の佐川旭先生に、失敗しない動線計画はどのように考えたらよいのかを教えていただきました。

佐川 旭(建築家/女子美術大学非常勤講師)

「つたえる」「つなぐ」をテーマに個人住宅から公共建築まで幅広い実績を持つ。近著に『住まいの思考図鑑』(エクスナレッジ)。他にも『最高の住まいをつくる「間取り」の教科書』(PHP研究所)、『家庭が崩壊しない間取り』(マガジンハウス)など著作多数。

1.はじめにゾーニングを
考えてみる。

設計案をまとめるにあたって建築家は始めに、建築条件をふまえ周囲環境との関係や各スペースのつながりを考えながら何通りかのシミュレーションを行います。この作業をゾーニングといいます。これは建て主もできます。道路からのアプローチ、日当りのいい場所で家族の集まるところ、階段の位置、水まわりなどを大きな円で敷地図面の上に書いてみるのです。何通りかを試すことで何となくまとまるでしょう。しかし1階と2階を重ねたら階段の位置がずれていたりと、なかなか上手くはいかないものです。ですがそれは気にしなくてよいのです。大切なことは家族が一緒に考えることで何を一番優先しているか、あるいは生活に必要な広さはどのくらいなのかを整理することができるからです。

敷地の中で一番日当りがよく心地良いスペースを家族が集まる場所とし、そこを中心にゾーニングをしていきます。

2.動線計画を考えてみる。

ゾーニングが整理されると次は動線計画の考え方です。動線とはゾーン間の人の動きを線で結んだものをいい、日常生活の中で家族それぞれの動きや過ごし方をイメージしながら計画していきます。動線はなるべく短く計画することが基本ですが、特に動きが多くなる家事動線と衛生動線はよく検討を重ねることです。
家事動線は炊事、洗濯、掃除など家事をする動線、衛生動線は浴室、トイレに行く為の動線です。家事動線で洗濯を1階でおこない、2階に物干し場がある場合は階段の位置もよく検討をしておくことです。なぜなら間取りは階段の位置が決まると全体が固まってくるからです。さらに家事動線は、家事をしながら家族との関係性も求められます。特に階段を利用した家事動線は「家族」と「個」の意識が切り替わるところでもあるからで、つなぎ方がとても重要なのです。
その中でも定番といわれるものを紹介しましょう。

上下の階をより身近に感じられるように、さらに通るたびに楽しい家事通路となるように工夫されたかろやかな階段。

3.団らんを中心に動線計画を考えてみる。

住まいづくりの目的は家族の居場所づくり、つまり団らんをどうつくるかです。しかし近年は共働きや子どもも忙しく食事もバラバラで、家族のコミュニケーションも希薄な関係になっているように感じます。
動線計画も含めあらためて団らんのあり方を考えてみましょう。住まいは大きくプライベートスペース、パブリックスペース、そして水まわりと3つの要素で構成されています。
この3つの要素の中に外で代用できるものがあります。たとえば寝室はホテル、浴室は健康ランド、トイレは近くの公衆トイレといった具合です。ただ団らんのスペースだけは外での代用がききません。団らんは普段見慣れた風景の中にあって、安心したくつろいだ空間が求められるからです。したがって住宅は団らんを中心として考え、そこから動線計画をしてみて下さい。その動線には必ず団らんへ迎うコミュニティーという動線が生まれるはずです。仮にその動線が多少長くなったとしてもその長さを利用して遊び心が演出されれば、思わぬコミュニティーを誘発させることもあるでしょう。

団らんを中心に考えられたスペースには気配を感じさせる動線もあります。これらの動線は何気ないコミュニティーをつくってくれるのです。

4.キッチン・ダイニングの家事動線を考えてみる。

キッチンは食事をつくる場という本来の目的に、今やコミュニケーションという目的が加わり住まいの中心的な役割もはたすようになりました。
したがって憧れや格好の良さだけで選択してしまうと本来必要な作業性が損なわれたり、動線もスムーズにいかず落ち着かないスペースになってしまいます。
大切なことは使い方や目的を明確にすることで、キッチンとダイニングの広さや関係性もより計画しやすくなるのです。たとえば生ごみを出す時に玄関から出すのか、その際リビングを通るのか、あるいは勝手口から出すのかなどを含めこまかいところまで家事を思い浮かべて動線をイメージしてみることです。
現代社会の中で唯一働いている姿を子どもにみせることができるのはキッチンを含めた家事労働ぐらいです。時には家事動線と子どもの動線をわざと交差させ働く姿を見せてあげることも大切な考え方です。

写真中央奥に家事コーナー、右側にキッチン、手前がダイニングです。家事コーナーを中心に動きやすい三角形の家事動線をつくっています。

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