理想の住まい研究所

vol.4 失敗しない間取り術②通風・採光計画の重要性と考え方について

快適な住まいの条件は何といっても通風・採光が十分確保されていることです。したがって周囲環境を読み解きながら建物の配置、そして間取りの両方で検討することがとても重要です。さらには開口部の取り付ける位置と大きさ、開閉方法なども大切です。間取り博士と呼ばれる建築家の佐川旭先生に、失敗しない通風・採光計画はどのように考えたらよいのを教えていただきました。

佐川 旭(建築家/女子美術大学非常勤講師)

「つたえる」「つなぐ」をテーマに個人住宅から公共建築まで幅広い実績を持つ。近著に『住まいの思考図鑑』(エクスナレッジ)。他にも『最高の住まいをつくる「間取り」の教科書』(PHP研究所)、『家庭が崩壊しない間取り』(マガジンハウス)など著作多数。

1.風と光-折り合いをつけて暮らす。

縦に細長い日本は亜寒帯から亜熱帯に属し、列島の真ん中に山脈が位置するため地域ごとに風土が存在します。日本の住まいはこれを上手に活かし、高温多湿の気候に合わせた風通しのよい住環境をつくってきました。
日本の住まいの大きな特徴は、外部と内部の境界、つまり開口部があいまいな空間であることです。「まど」は外と内の空間を仕切る「間の戸」(間戸)であり、外と内の風穴(window)が窓という欧州の考え方とは大きく異なります。日本の間戸は一部を開放することで限られた空間に広がりをもたせ、機能を限定しない多用途な空間を生み出しました。まさに自然といかに折り合いをつけて共生するかを大切にして暮らしてきたのです。
夏の蒸し暑さに対処するなら風通しのよい開放的な空間(ひらく家)、冬の寒さをしのぐには閉鎖的な空間(とじる家)にします。
開放と閉鎖の両極端な考え方は四季の変化で衝突しますが、この衝突するポイントをいかに工夫するかが風と光をデザインする鍵になるのです。

日本の住まいの大きな特徴は、外部と内部の開口部があいまいな空間であることです。つまり間の戸です。

2.風の流れをつくる。

日本はこれまで高温多湿の気候に合わせて風通しの良い住環境をつくってきました。しかし現代の住まいは耐力壁の確保、高気密高断熱など性能を上げれば上げるほど風の流れをつくり出すのが難しい状況にあります。したがってどうしても人工的につくられた冷風に頼ってしまう傾向にあります。しかし人工的な風は人に対して心地よい気持ちにはさせてくれないものです。機械的につくられた風には変化はなく規則的だからです。人はただ単に風がほしいのではなく、そこには肌をなめらかに通り抜ける気持ちの良い風と共に、空気のよどみも流してくれる「風通し」を期待しているのです。

間仕切り壁の上部に設けられた欄間はしっかりと風通しの道をつくってくれます。

3.光の流れをつくる。

日本の夏は太陽高度が高くなるので、日中室内に日差しが入り込むことはありません。逆に冬は太陽高度が低くなるので、南中時住まいの奥まで日差しが入ってきます。特に冬の寒い時間はその暖かさを享受できるので日当りを考えて建物の配置、さらには間取りを考えます。ただ都市部の密集しているところで南側が開放されているところは限られています。
仮に南側が開放されていない場合は、トップライトやハイサイドの光などを利用すればとり入れること可能です。
ただ住まいはすべての部屋に光が差し込む必要はなく、必要なところに必要な明るさがあれば十分なところもあります。光には反射を繰り返して流れながら周囲を明るくする性質があります。この流れを利用して必要な場所へ必要な明るさを届ける工夫も考えられます。
又必要以上の光は熱と共に生活を妨げになることもありますので、窓の位置や大きさも十分に検討することです。

上部からの光は季節の変化によって光のおちる位置はもちろん、光のグラデーションもあり空間を楽しませてくれます。

4.通風計画と採光計画の考え方。

通風計画

高温多湿の夏に温度と湿気を抑えるには、南北に吹く風の通り道をつくることがポイントです。それには建物の配置と間取りの両方で検討することです。間取りで注意するところは、風の入口は大きいのに出口があまりにも小さいと風の流れは強く音をたてることもあります。できれば同じ位の開口部でストレートに抜けるようなバランスのよい位置関係に設けることがベストです。
又風のない時や窓を開けられない時でも、家の中に空気のよどみをつくらないようにしたいものです。具体的には建具を引戸にしたり扉の上部に欄間を設けたりするなど、室内全体をひとつの空間と捉えて空気の流れをつくってあげることです。

採光計画

快適な住まいの条件は何といっても採光が十分確保されていることです。したがって間取りを考える前に敷地に落ちる影を調べることです。特に冬至(12月22日頃)は日の出から日の入りまでどのように影が動くのかを観察してみて下さい。
仮に北側の採光条件が悪い部屋であっても高窓を設けたり、隣室の間仕切りを工夫することで明るさを得ることはできます。
かつて日本家屋は壁に白いしっくいを使い、そこに光を反射して拡散させました。
この手法は現代の住まいにも活かすことができます。こうした光は変化の大きいまぶしい直射日光より、程良い明るさでやさしい光になりとても心地よいものです。

「和」と「洋」を融合した、折衷デザインの内装。和の外観にもマッチする

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