理想の住まい研究所

vol.5 安心安全な住まいのつくり方

生活の基盤となる住まいは、「安心・安全」であることが大前提になります。自然災害など様々なリスクに備え、安心して暮らせる家をつくるためにはどうしたら良いのでしょうか?住宅の性能や品質について詳しい建築家の井上恵子先生に、安心・安全な住まいをつくために必要な条件やチェックポイントについて教えていただきました。

井上 恵子(一級建築士・インテリアプランナー)

住まいのアトリエ井上一級建築士事務所主宰。住宅の性能や品質、間取りに関する記事を多数執筆。住宅購入セミナーの講師など。著書に『大震災・大災害に強い家づくり、家選び』(朝日新聞出版社)ほか。

安心・安全に暮らすための2つの視点

日本は世界の中でも自然災害が多い国です。台風や大雨などによる被害は毎年のように報告され、今後大きな地震が発生する確率も高いといわれています。これから家を建てる時には、これらの災害に負けない、強い家にすることが大切です。
そしてもう一つ欠かせない視点が「防犯性」です。警視庁発表のデータによると、近年の全体的な侵入窃盗数は減少傾向にあるものの、住宅への侵入窃盗数はいまだ多く、一日当たり約130件もの侵入窃盗が発生しているとのことです。泥棒は私たちの財産だけでなく大切な家族の命を脅かす可能性もあり、また、被害が最小限にとどまったとしても、愛着のある大切な家に泥棒に入り込まれたという精神的な負担はとても大きいものです。

以上のことから、安心・安全な住まいであるためには「災害に強く」「防犯性が高い」こと、この二つは欠かせない条件となります。ではこれからこの条件を満たすために押さえておくべきチェックポイントを確認していきましょう。

【侵入窃盗の発生場所別認知件数(平成26年)/出典:警視庁「すまいる防犯110番」】
侵入窃盗が発生する場所で一番多いのは住宅で56.1%を占め、そのうち一戸建て住宅が38.5%となっています。一戸建て住宅が狙われやすいことがわかります。

災害に強い家の条件

まずは災害に強い家をつくるための条件を考えてみましょう。チェックポイントは二つあります。
1)自然災害が発生しにくい土地・地盤であること
2)災害に耐えうる強い家であること

1)の「自然災害が発生しにくい土地・地盤」とは、洪水や土砂災害、液状化の発生の恐れが少ない土地、固くてしっかりしている地盤のことを言います。過去の経験や調査をもとに、今では多くの自治体で自然災害が起きやすい危険箇所を予測し、色別するなどわかりやすく地図に落とし込んだもの(=ハザードマップ)を作成し、一般に公開しています。インターネットなどで手軽に調べることもできますので、家を建てる場所の安全性について、ぜひ一度ハザードマップで確認してみてください。

2)の「災害に耐えうる強い家」とは、家そのものが強いつくりであることを言います。中国などで大地震が起こるたびに手抜き・欠陥工事が発覚してニュースになりますが、災害に耐えるためにも欠陥や手抜きはあってはならないことです。地震の多い日本では、建築基準法という法律で厳しい耐震基準が設けてあり、その基準を守って建てれば安全な家になります。注意したいことは、それらの基準を守り、設計図通りにきちんと工事をしてくれる施工会社や工務店を選ぶことです。過去にその会社で家を建てた人の話を聞いたり、ご近所で評判を聞いたりすること、工務店選びの判断材料のひとつになります。

国土交通省のハザードマップポータルサイト
自然災害の危険個所や写真を重ねてみることができる「重ねるハザードマップ」や、各市町村のハザードマップを閲覧できる「わがまちハザードマップ」がある。まさにハザードマップの入り口的なサイト。

防犯性の高い家の条件

次に防犯性の高い家をつくるための条件を考えてみましょう。こちらもチェックポイントは二つあります。
1)狙われにくい家づくり、狙われやすい部分の防犯性を強化
2)ご近所と連携をとって見守り力をアップ

1)の「狙われにくい家づくり」とは、まずは泥棒に目をつけられにくい家にしようということです。例えば家の周囲を高い塀などで囲んでいたり、植栽が生い茂って敷地内の見通しが悪い家は、いったん侵入したら人目につかなくなるため、泥棒に好まれる家となります。その次に、泥棒に狙われやすい開口部はどこか見極めて、その部分には面格子やシャッターなどを設けて防犯性を強化しましょう。泥棒に狙われやすい場所とは、道路や周囲の家から見えにくい部分です。体が通らないような小さな窓は除きますので、シャッターや面格子をつけたくない場合などはそのような小窓を多用する方法もあります。シャッターや面格子、玄関ドアには、特に防犯性に優れた商品も出回っており、目印に「CPマーク」がついています。これらを採用することで、さらに高い防犯性が期待できます。

2)の「ご近所との連携」とは、ご近所同士で見えない領域(バリア)を作って泥棒を撃退する方法です。泥棒が一番嫌うのは「人目」です。多くの泥棒は狙った家の下見をしますが、ご近所同士の連携が取れている地域では不審者が紛れ込んでもわかりやすく、その際に「どちらに御用ですか?」などと声をかければその泥棒はあきらめる可能性が高くなります。このように近隣同士の連携は泥棒よけに威力を発揮します。前半で触れた自然災害発生時にも、ご近所同士で助け合う関係ができていればとても心強いものです。安心・安全な暮らしを得るために、良好な近隣関係は大きな力になってくれます。

【防犯性の高い建築部品であることを示すCPマーク】
主に玄関ドア、鍵、サッシ、面格子、シャッターなど泥棒に狙われやすい部分に使う建築部品のうち、特に防犯性が高いと認められた商品に付けられているマーク。

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